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ほっと茶ッと〈熊崎康記〉◎ 「稽古照今」伝統を今に活かす

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 「茶道をやっています」といえば、「どこでお稽古をしているの?」と聞かれた経験は多いのではないでしょうか。
 稽古という言葉は「稽古照今」という言葉から来ているようです。

 「古(いにしえ)を稽(かんが)へて風猷(ふうゆう)を既に頽(すた)れたるに繩し。今に照らして典教を絶えむとするに補はずということなし」
古事記の序文が出典です。

 過去の出来事や先人の教えから学び、現在の事象に照らし合わせて教訓を活かすことです。
ここが「練習」とは違うところです。あくまでも先人からの学び、がついてまわるわけです。
今ある姿は長年、繰り返し行われる中で洗練され、スマートになった姿が残っているのでしょう。
 古より伝わってきた伝統には多くの学びがあり、今日、私たちは学んでいるのが稽古ごとと思っています。

祇園祭の山車をよく見てみると、中国のみならず西洋由来のタペストリーのようなものも使われているものがあります。
その時代に良いと思った人が取り入れたのでしょう。当時は一部には反感があったかもしれませんが、大勢が良いと思ったからこそ定着し、時代を経て今の時代に私たちが見てもあまり違和感がないように思えます。
 別種のものでも、良いと思えば取り込んでいくのが伝統の懐の深いところであり、日本人特有の素晴らしい感性ではないでしょうか。
 稽古の中で先人の素晴らしい感性に触れ、自分の中の感性も磨いていきたいものです。

 写真は初秋の室礼。

 くまざき・やすき 裏千家茶道教室「無盡庵」主宰