知る・学ぶ

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尺八野村峰山さん初の「芸術特別栄誉賞」
名古屋市芸術賞・市民芸術祭賞の授賞式
マスコミそっぽ、公開贈賞を

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 名古屋市の芸術振興に貢献しているアーティストを顕彰する同市芸術賞と、舞台公演の優劣を競うコンペティション「名古屋市民芸術祭」受賞者、8個人2団体に対する授賞式が2023年2月7日、名古屋市公館で開かれました。河村たかし市長から、尺八の重要無形文化財保持者(人間国宝)に昨年認定された野村峰山さんに、同市初の芸術特別栄誉賞(副賞50万円)が贈られました。芸術特賞(同40万円)は、布による空間表現を追求する現代美術の庄司達(さとる)さん。

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(写真は、お祝いのコーラスを披露する金城学院大学の声楽専攻合唱団リリーミューズ)

 

 若手・中堅に贈られる芸術奨励賞(同20万円)は3人に。 20年にわたってソロリサイタルでピアノピアニストの石川馨栄子(かえこ)さん、師を持たず高い身体能力を活かして独自の現代舞踊を追求する石川弘恵さん。大学時代に能楽に出会ってプロの道に進んだ名古屋能楽界では希少な能楽太鼓方、加藤洋輝さん。

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 一方、市民芸術祭2022の受賞公演は、本賞に当たる「市民芸術祭賞」は2人。音楽部門が岐阜大学准教授の声楽家、近野賢一さんの「 バリトンリサイタル ~冬の旅~」。祖母・母と3代続く箏曲師範の竹本知子(さとこ)さんが、芸道30年を記念して33歳で初めて挑んだリサイタルで栄誉に輝きました。
次点に当たる「市民芸術祭特別賞」は1個人2団体に。音楽部門はチェロでは16年ぶりの賞となった高木俊彰さんのチェロリサイタル、演劇部門は劇団「16号室」の一人芝居、唯我独尊「THE BEE」。舞踊部門は、塚本洋子さん主宰の40周年記念テアトル・ド・バレエ カンパニーメモリアル公演 深川秀夫版「ドン・キホーテ」全幕が受賞しました。

 受賞あいさつ(要旨)は次の通り。

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【 芸術特別栄誉賞 尺八 野村峰山さん】
芸の道は遠く、はるか続く登り坂。一時でも休めば登るには倍の力が要り、手を緩めばどんどん下ってゆく。受賞は身に余る光栄。実は名古屋市からは初めての賞。文化庁の芸術祭が贈賞を廃止した。(舞台公演の優劣を競う)贈賞は舞台に携わる者にとって大きな励みになっていた。市民の関心を高めるために、せめて新聞は大きく扱ってほしい。

IMG_9291.JPG【芸術特賞 現代美術 庄司達さん】

京都の美術大学を出て名古屋に戻って高校のデザイン教師になった。いい先生になろうと思ったが、なれず、アートの道に進んだ。高校教師時代、女子生徒たちがハンカチを手に手に手に振っていた光景が衝撃的で、布を使った私の空間表現の出発点となった。この賞は私の人生の半分に対する賞だと思っている。

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【芸術奨励賞 ピアノ 石川馨栄子さん】
ソロリサイタルを中心に演奏活動をしていたので、賞は縁遠いものと思っていた。目にみえる成果を自分では確認が難しい活動を、推薦いただき、認めてもらえてうれしい。

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【芸術奨励賞 現代舞踊 石川弘恵さん】
ダンスは何が大切か。それは見る人が決めるもの。私には先生がいません。みんなにどう伝わるか。(涙声で)母(立子さん)と常に二人三脚でやってきました。諦めない、とことんやり抜く。その継続です。

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【芸術奨励賞 能楽太鼓方 加藤洋輝さん】

高校時代吹奏楽をやっていたが、大学に入って能楽を知り、わずか4人の囃子方で大勢の吹奏楽に匹敵する厚みのある演奏ができることにひかれ、能楽の道に進んだ。今年は世阿弥生誕660年の記念の年に受賞でき、芸道精進に励みたい。

【名古屋市民芸術祭賞音楽部門 近野賢一バリトンリサイタル ~冬の旅~】
コロナ禍の3年間、声楽分野はかなり苦戦した。同じ声楽でも合唱、オペラは頑張っている。私は大好きで、ライフワークのドイツ歌曲の魅力を一層伝えるべく、励む。

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【同伝統芸能部門 竹本知子 箏リサイタル2022 】
祖母、母と3代続く箏曲師範の家に生まれ、3歳から母に手ほどきを受け、内弟子修行を経て、芸道30年の記念に初めてのリサイタル。この賞は私の成果ではない。師匠、助演者、みなさんのおかげ。家庭では6歳、4歳、1歳の3人の子の母。芸道に励める環境、家族に感謝し、名古屋の文化振興に少しでも寄与したい。

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【同特別賞 音楽部門 高木俊彰チェロリサイタル ベートーヴェンチェロ作品全曲演奏会 Ⅰ】
私にとって初めてのリサイタル。チェロでの本賞受賞は、私の師匠の子息、林裕さん以來16年ぶり。共演したピアノの桑野郁子さんと室内楽を10年続け、よき時間の積み重ねがあっての賞と思っている。

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【同特別賞 演劇部門 16号室 唯我独尊「THE BEE」】
こんな偉そうな場所とは縁がなかった。仲間と一緒に式に来てよかった。八代将弥の一人芝居で、90分演じ特別賞「チャレンジ賞」をもらった。事前に1分間の持ち時間で受賞あいさつをと言われていたが、皆さん堂々とその枠を破ってのスピーチ(笑)。表現者だなと思った。

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【同特別賞 舞踊部門 40周年記念テアトル・ド・バレエ カンパニーメモリアル公演 深川秀夫版「ドン・キホーテ」全幕】
主宰の塚本洋子さんが代表してあいさつ。当団の芸術監督を16年間務めて2020年死去した深川秀夫。秀夫とともに受賞したのはこれが4度目。授賞式に一緒にいるはずの秀夫がいないのが残念でならない。舞台の良し悪しはお客が決めること。いいなって思ってもらい、次に繋げるのが私たち。
     

        ◇ ◇

両賞の贈呈式はコロナ禍でと3年ぶりの対面贈賞となりました。両賞は「芸どころ名古屋」を代表する芸術顕彰の場ですが、一紙(毎日新聞)を除いて、今回も新聞、テレビなどのマスコミ取材はありませんでした。コロナ禍以前より、大手メディアが加盟する「名古屋市政記者クラブ」は受賞者報道発表の資料投げ込みをほとんど扱わず、授賞式にもめったに記者が顔を出すことがありません。「愛知県政記者クラブ」も同様です。愛知県芸術文化選奨もマスコミはほとんど扱わない、授賞式も報じない。地元芸術文化に対する異様な"報道ネグレクト"が常態化しています。
名古屋市が特設した「名古屋市芸術特別栄誉賞」を初受賞した尺八の野村峰山さんは、あいさつで地元マスコミの報道ネグレクトを念頭に「市民の関心を高めるため、もっと大きく扱ってほしい」と苦言を呈しました。
河村たかし市長は「人の心を動かすのはアート。野村さんの尺八はテナーサックスのようで、こんな立派な方が名古屋にござったのか、と驚きました。皆さん、おめでとう」などと、あいさつしました。また、本当ならビッグニュースというプランをさらっと言ってのけました。「リニア名古屋駅から歩いて数分のところに、プラシド・ドミンゴのような世界のトップアーティストがぞろぞろ来るようなコンサートホールを、ちょっと考えている」とも語り、名古屋の玄関口にも新たな文化・集客施設の構想があるようなのです。今どき往年の3大テノールのドミンゴって、どうよ、とツッコミたくなりますが、4月の統一地方選挙を前にしたアドバルーンでないことを願いたいところです。

 報道ネグレクトに話を戻すと、名古屋市、外郭団体の名古屋市文化振興事業団の発信力、企画力の弱さもあるようです。
名古屋市芸術賞は1975年度から、名古屋市民芸術祭は1990年度から続き、両賞の授賞式は同時開催されてきました。受賞者と関係者を招いてホテルなどを会場に、式典後は酒食を伴う会食パーティーが10数年前まで行われていましたが、予算削減で飲み物だけ、さらに飲み物提供も取りやめて、会場費を削って名古屋市庁舎内か関連施設での式典と記念撮影が、非公開で行われてきました。授賞式の簡素化は当然ながら、贈賞の当局と選考・審査委員、受賞者本人と家族、芸仲間、一部メディアが集うだけの内輪の会の印象は否めません。
受賞者一人ひとりに受賞あいさつもさせなかった以前のやり方は、いかにも事務的でした。今回やっと改められましたが、表彰盾、賞金目録を渡して、記念撮影という形式では、どんな実績を積んだアーティストなのか、分かりません。涙声になった受賞あいさつがあって、血が通った贈賞になりました。

 

 WEB茶美会は以下、提案します。
地元の芸術文化の動向をきちんとウォッチせず、ネグレクトがしている大多数の在名マスコミは、あてになりません。受賞者の業績、活動をコンパクトにまとめた動画を、受賞者発表とともに、名古屋市や名古屋市文化振興事業団がWEBから発信すべきです。
芸術文化の顕彰の場にふさわしく、授賞式の内々開催はやめて、ホールで開催、市民に無料公開しましょう。受賞者の顔ぶれを載せた授賞式の無料公開募集のチラシを作成して、関係施設に配布すれば、それだけでも市民の認知度アップにつながるはずです。
単なる式典とせず、観客も楽しめるように工夫します。動画で受賞者の活動を披露し、インタビュー形式で受賞あいさつをして、アーティストの人となりを浮き彫りにする。その後、前年の受賞者のうちから2組程度を選抜してミニコンサートを催します。
 これは、愛知県芸術文化選奨の授賞式も同じことが言えます。ある受賞者が嘆いていました。「新聞地方版に短信扱いでちょろっと名前が出たきり。授賞式こそと思ってたら、マスコミの取材は一切なし。肩透かしでした」。地元マスコミに籍を長年置いて、報道ネグレクトに知らず染まっていた自身の反省を踏まえ、あえて提言したいと思います。

   WEB茶美会編集長 長谷義隆