知る・学ぶ

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日本のオーケストラ「名古屋に源流」
新発見の貴重資料を大学へ寄贈
NHKのニュースに
WEB茶美会編集長 音楽学会でも発表へ

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日本のオーケストラの源流になった少年音楽隊が、名古屋にあったのをご存知でしょうか。明治末の1911年、百貨店の宣伝バンドとして発足した、いとう呉服店少年音楽隊(松坂屋少年音楽隊と改称)です。日本を代表するオーケストラの一つ、東京フィルハーモニー交響楽団の母体となりました。

中日新聞編集委員だったWEB茶美会編集長の長谷義隆は2015年、元隊員楽士の遺族宅に眠っていた音楽関係の写真資料や手記などを調査報道によって発掘し、1年半ほどかけてそれをもとにオーケストラ黎明期から創成期の知られざる実像を掘り下げました。60回にわたる新聞連載を経て、それをまとめた本『発掘 レトロ洋楽館 松坂屋少年音楽隊楽士の軌跡』(あるむ)を出版しました。

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取材着手から7年、遺族から預かった資料一式と遺品の愛用バイオリン一挺の計300点が、長谷の立ち会いのもと、遺族から2022年11月17日、愛知県立芸術大学(長久手市)に寄贈されました。戦前の音楽写真150点の多くは保存状態もよく、他には現存していない貴重なものです。

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寄贈の模様は、NHKの東海地方ニュースで翌18日放送されました。見逃し配信が25日まで、以下のURLで視聴できます。
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20221118/3000026027.html

同大学音楽学部音楽学コースの研究室によって、精査され、後日公開される予定です。

新聞連載当時から「音楽史的に貴重な発見」と注目されていましたが、刊行を機にあらためて脚光を浴び、日本音楽学会から長谷に対して発表要請がありました。取材、調査手法を交えて、12月3日午後、愛知県立芸術大学で開催の中部支部例会でお話します。日本音楽学会中部支部のホームページから事前申し込みすば、学会員以外でもオンラインで無料視聴できるそうです。

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贈呈式では、声楽家で旧知の戸山俊樹学長から「知らないことばかりでした。とても面白く一気に読みました。手記を読むと、主人公の丹羽秀雄さんという方はステージ上で演奏するより、聴衆に姿が見えないオーケストラピットで弾くのが好きだとあり、同じ音楽家として、人間的にも共感するところがありますね。当時一世を風靡した三浦環や藤原義江という国際的なオペラ歌手から、伴奏オーケストラのコンサートマスターを頼まれるなんて、とても信頼厚かったんですね。舞台であがった歌手のために、臨機応変にコンマスとして対処するなんて、音楽をよく知っていなければできない芸当です。音楽家として信頼できる人だったんだな、と心が温まりました」などと、音楽談義に話が弾みました。

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本題名『発掘 レトロ洋楽館 松坂屋少年音楽隊楽士の軌跡』
A5判 110ページ(うち写真グラビア16ページ)、定価税込み2,000円

著者 長谷義隆 丹羽秀雄、発行人「発掘レトロ洋楽館」刊行委員会、制作・印刷・製本 株式会社あるむ

作曲家・指揮者山田耕筰、世界のテノール藤原義江、欧米を席捲したプリマドンナ三浦環‥ 、 20世紀を代表する音楽家たちが信頼を寄せたオーケストラ奏者がいました。名古屋市生まれの丹羽秀雄(1909~91年)。その数奇、波乱の足跡は、激動の20世紀の知られざる文化の断面を照らし出します。
大正~昭和前期、名古屋は東京と並んで日本のオーケストラの源流の地でした。これまで分からなかった日本のオーケストラ黎明期の実像、内情が、松坂屋少年音楽隊(日本で最も歴史のあるオーケストラ、東京フィルハーハーモニー交響楽団の母体)出身のバイオリン奏者、丹羽秀雄が残した多数の音楽写真と手記を手がかりに、丹念な取材、調査から浮かび上がりました。
名古屋で産声をあげた少年音楽隊がオーケストラへと成長する洋楽勃興の時代、バイオリンを引っ提げて名古屋、東京、満州(中国東北部)と渡り歩いた波乱の足跡は、激動の20世紀の知られざる歴史を照らし出します。
本書は、舞台芸術の取材に長年携わった元中日新聞編集委員の長谷義隆(はせ・よしたか)の連載全編と、丹羽秀雄の回想手記「古稀回顧」全文をあわせて出版しました。日本の洋楽受容の歴史に詳しい井上さつき愛知県立芸術大学名誉教授は「貴重な音楽史料」「今後の調査、研究の基礎となる」と本書を高く評価しております。
グラビアには、初公開を含む日本のオーケストラ黎明期の写真20数点を掲載。このうちの一葉が、当時の腕利き奏者を集めた満洲国建国10周年慶祝交響楽団の一行の1942年9月25日の記念写真。日本のオーケストラの演奏向上に貢献して満洲で客死したヨゼ・ケーニヒ(1875~1932年)の墓を訪れた際に撮影され、同楽団を率いた山田耕筰やチェリスト齋藤秀雄ら著名音楽家ともに、丹羽も一緒に記念撮影に収まっていたことが判明しました。丹羽秀雄は日本楽壇において知る人ぞ知る存在でした。読み込むほどに新たな史実が分かる、他にはない貴重な音楽写真を多数収録。読みやすく、しかも研究資料としても第一級の内容を持ち、有識者から「50年、100年残る名著」「発見に満ちた内容」などと、賛辞が寄せられております。

購入問い合わせ
「発掘レトロ洋楽館」刊行委員会、著者
WEB茶美会編集長 長谷 義隆(はせ・よしたか)
email sabiejapan2021@gmail.com

なお、名古屋市・近郊の主要書店(ちくさ正文館書店本店、長久手店、緑区店、知立店)、丸善名古屋店ほか、主要楽器店でも取り扱っております。