『キングダム』の世界 目の当たり 「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」展 名古屋市博物館で開催
「世紀の発見」とされる中国の始皇帝陵の兵馬俑(へいばよう)が、日本にやってきました。名古屋市瑞穂区の同市博物館で「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」展が2022年9月10日に開幕。新型コロナウイルスの流行後、兵馬俑が中国外で展示されるのは初めて。日中国交正常化50周年を記念して実現しました。既に終えた京都市京セラ美術館、静岡県立美術館に続く名古屋展で、この後、東京・上野の森美術館を巡回します。
秦の始皇帝は約550年続いた群雄割拠の春秋戦国時代を終結させ、紀元前221年に史上初めて中国大陸に統一王朝を打ち立てました。秦はわずか十数年で滅亡しましたが、始皇帝の墓に眠る兵馬俑は、その絶大な国力を現代に伝えています。
兵士や軍馬を模造した陶製人形「俑(よう)」は、皇帝や高貴な人物を死後の世界で守るべく、被葬者と共に陵墓に埋葬されました。
本展では、日本初公開となる将軍俑をはじめ、陝西省(秦漢両帝国の中心地域)の出土品を中心とした約200点が来日しました。 監修は、映画『キングダム』の中国史監修を務めた鶴間和幸・学習院大学名誉教授です。キングダムの世界が、肌で感じられる展覧会といえます。
始皇帝の死後約2,180年の眠りについた兵馬俑は、1974年に陝西省の畑で井戸を掘っていた農民が偶然発見。兵馬俑の総数は約8000体と推計され、現在も調査が続いています。
始皇帝は、殉葬の代わりに等身大の兵馬俑を製作しました。生前の将軍や武士、馬の実在の表情、姿を写し取ったかのようにリアルです。
展示会では、紀元前の春秋戦国時代から中国初の統一帝国・秦朝とその後の漢朝までの文化財を展示。秦と漢両王朝の兵馬俑36体をはじめ、武器や馬具、楽器など計約200点を見ることができます。
これまで11体しか見つかっていない将軍俑のうち、日本初公開となる1体が到来。高さ196センチもの大きさで、始皇帝につかえた将軍の姿を想像でき、漫画『キングダム』の世界さながら。
紀元前202年、劉邦が西楚の項羽を破って中国再統一を果たした漢王朝は、秦の国家制度を引継ぎ、黄金時代を築きました。
戦国時代につくられた小さな騎馬俑は、なぜ始皇帝陵では突然等身大の兵馬俑となり、漢代では再び小さくなったのでしょうか。本展では、秦漢王朝の中心地域であった現在の陝西省の出土品を中心に、日本初公開の中国国家一級文物23点(最高級の貴重品を指す中国の指定文化財)を含む約200点から、古代中国史の謎に迫ります。
第1章 統一前夜の秦~西戎から中華へ
戦国時代の墓から発掘された騎馬俑は高さ22㎝。小ぶりです。騎兵や馬の表情は愛らしさすら感じられます。鹿や虎の文様が描かれた秦の瓦には、秦の人々の動物への愛着心が見てとれます。
《騎馬俑》 咸陽市文物考古研究所蔵、一級文物
第2章 統一王朝の誕生~始皇帝の時代
始皇帝陵から出土した兵馬俑がずらりと並びます。
《戦服将軍俑》 高さ196センチ 秦始皇帝陵博物院蔵 一級文物。11体しか確認されていない将軍俑のうちの1体です。日本初公開。右手は剣を持つポーズをとっています
《立射武士俑》 高さ178センチ 秦始皇帝陵博物院蔵、一級文物。まさに弓を射ようとしている力感が感じられます
《戦車馬》 秦始皇帝陵博物院蔵、 一級文物
《跪座俑》 高さ64センチ 秦始皇帝陵博物院蔵 、一級文物
少し小柄なこの俑は動物を飼育する役人の姿を7割程度のサイズで模造したもので、馬の墓に埋葬されました。「死後の世界でも馬の世話を」という当時の人々の想いが宿っています。
《2号銅車馬》(展示は複製品) 秦始皇帝陵博物院蔵 始皇帝が乗った馬車を2分の1のサイズで模したもの。6000件もの部品がつなぎ合わされ、御者の手綱や部品まで精巧に再現されています。
第3章 漢王朝の繁栄~劉邦から武帝まで
《彩色騎馬俑》 咸陽博物院蔵
秦滅亡後の漢代になると、兵馬俑は再び三分の一ほどの大きさに縮小され、画一的な顔へと変化していきます。兵馬俑の時代変遷にも着目し、各時代の兵馬俑に秘められた歴史を紐解きます。ヒツジやブタなどの動物俑、青銅器、金印も紹介。
なかでも、36年ぶりに来日する、漢の武帝が作らせたと伝わる秘宝・鎏(りゅう)金青銅馬は見逃せません。
特設展示 春秋戦国時代を描いた人気漫画「キングダム」のパネル展示コーナー
【開催概要】
◆会場 名古屋市博物館 (名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1)
◆会期 令和4年(2022) 9月10日(土)~11月6日(日)
休館日 毎週月曜日(祝休日の場合は翌平日、9/20は臨時開館)・第4火曜日
◆開館時間 9時30分~17時00分 (入場は16時30分まで)
◆観覧料 一般1,800円・高大生900円・小中生500円