万葉抄
名にし負はば逢坂山のさねかづら‥
人目を忍ぶ恋
気がつけば、今日で11月が果て、明日からは、はや師走。
人肌恋しい夜です。
百人一首25番「名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな」
(藤原定方、後撰和歌集)
人目を忍ぶ恋を詠んだ歌が目にとまりました。
逢坂山に生えているさねかずらのつるを巻き取って引っ張れば、ツタの先に恋しいあの人がついてきたらなあ、と。
茶花の赤い実が、サネカズラです。
艶々した真っ赤な小さな粒が集まったサネカズラは、万葉集の時代から果実の美しさが人を惹きつけてきました。
私も、山で見つけた時には、暫し目を奪われました。
古歌には、しばしば「さねかづら」「さなかづら」として詠まれ、
男女が一緒に寝て愛し合う「さ寝」の掛詞として使われるそうです。
文・写真 内藤啓