万葉抄
野山に咲く葛の花
踏みしだかれて色あたらし
葛の花といえば、
「葛の花 踏みしだかれて 色あたらし この山道に 行きし人あり」という釈迢空(しゃく・ちょうくう)の短歌が有名です。歌集『海やまのあひだ』の一首です。
この歌を現代語訳すると。
「あざやかな赤紫の葛の花が 踏みにじられて、鮮烈な色があたり一面に広がっている。ああ、この山道を自分より先に通った人がいるのだ」
歌人・釈迢空は、大阪生まれの国文学者で民俗学者として有名な方で、学者としては折口信夫の名前で活動していました。
近くの野山を歩いているとき、赤紫の花びらが落ちているのを見つけ、上を見上げると、葛の花でした。
手を目いっぱい伸ばし、ようやく一輪、手に入れました。
文・写真 内藤 啓