知る・学ぶ

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拾穂園で納涼「愉か多会」
「金」ラッシュ五輪を予祝
冷茶で楽しむ夏土用の茶

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 茶美会日本文化協会の本部茶室「拾穂園」(愛知県稲沢市)で2021年7月24日、拾穂園の一門茶会「愉か多会」が開かれ、涼しげな浴衣姿の茶客を、趣向を凝らした2席のお茶でもてなしました。
 一門の稽古発表を兼ねて愉しみ多かれ、と名付けられた夏の納涼茶会・愉か多会。例年だと、心づくしの点心席を設けるところ、感染症対策のため、一席5人以内、温茶、冷茶の薄茶2席に変更し、入れ替え制で味わってもらいました。

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 村方にも茶の湯が根付いた尾張地方。拾穂園はその伝統的な主屋の庭を借景に、周遊式の苔むす茶庭が広がります。庭と茶室が一体化した庭屋一如の茶の湯空間です。設計・監修は国内外の日本庭園を手がける野村勘治氏です。

 緑の築山に面した広間席は、瓶掛けの略盆点前「茶美会テーブル茶道」の畳版。黒柿のしま模様が涼しげな敷板に、小ぶりの唐金風呂に銀瓶をかけて、略盆点前でお茶が振る舞われました。茶美会テーブル茶道は現代生活に有用なお茶をモットーに、武家茶・有楽流の優美で剛健な点前を切り詰めた現代版サムライ茶道です。茶道入門編のこの点前稽古に励む門人たちにとって、この日がデビュー茶会。愉か多会前の特訓練習により、お点前がグッと向上し、緊張しながらも滞りなく美味しいお茶を点てることができました。

 

 床は、前夜開幕式のあった東京オリンピックにちなみ、日本勢の活躍を予祝する取り合わせです。日本代表の凱歌を象徴し、江戸時代の高名な茶匠自筆の「君が代」の歌を掲げ、そこへ純白の木槿、薄紫のジャノヒゲを添えて、前祝いと清涼感を表現しました。
 茶碗は瀬戸の陶芸作家の「金結晶曜変」。茶器は豪華な金高蒔絵の琳派棗。主菓子は特注の葛焼・銘「日の丸」。菓子器も金、銀、銅にちなむ象彦製のめでたい漆器など、メダルラッシュを前祝いする取り合わせで、祝祭感を演出しました。

勝負ごとで縁起のいい勝ち虫、トンボの竹細工が床のアクセントになりました。

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もう一席は冷茶席。下地から7回重ね塗りした土壁に囲まれた茶席で、滝水が流れ落ちる四条丸山派の画幅を床の間に掛けて、花入は滝壺に見立てた青磁大香炉を据え、そこへ蒲の穂と酔芙蓉を投げ入れました。床の間に飾った古染付の鯉形の香合は、鯉の滝登りにちなんだ取り合わせです。


氷水をたっぷり張った富士釜から汲んだ冷水で点てた冷抹茶は格別の美味しさで、茶巾洗いの点前ともども好評でした。高麗青磁、尾張徳川家お庭焼・萩山焼、乾隆ガラス碗など多彩な夏茶碗が茶席を賑わせました。

茶美会テーブル茶道は有楽流拾穂園主の長谷義隆が、伝統的な有楽流の薄茶点前を切り詰めて考案した現代版サムライ茶道です。洋室でも、伝統的な茶室でも違和感ないカジュアルさと格調が融合する、これまでにない略盆点前です。見学随時受け付けます。
問合はメールで。sabiejpan2021@gmaii.com