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ほっと茶ッと〈熊崎康記〉◎所作の型を身につける◎

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 日本に古来より伝わる諸芸の姿は「型の文化」といっても過言ではないでしょう。
 繰り返し型を学ぶことで、体の動きも体得していくわけですが、「体の動き」というより「体の使い方」といったほうがしっくりくるかもしれません。

 茶道の点前で言えば、「どうしたら袱紗(ふくさ)を綺麗にさばけるだろう?」から始まり、「茶筅の振り方」「柄杓の持ち方」「茶碗の拭き方」など、最初はぎくしゃくしながら覚えていった経験が誰もがあるのではないでしょうか。
 普段、何気なく右手や左手を使っているのに、いざ稽古となり、師匠から「そこは右手で」と言われたのに、思わず左手が出てしまう、という経験もあると思います。

 脳にはワーキングメモリー(作業記憶)という記憶機能があるそうですが、焦ってしまうと、このワーキングメモリーの容量は10分の1ほどになる、という法則があるのだそうです。
 普段は何気なくできることも、初めて行うときは、焦って脳のメモリーがうまく働かない。

 逆に考えると、型を身につけることは、焦って頭が真っ白になった時に、戻る場所があるという拠り所を作ることかもしれません。
 写真は、インスタライブでお茶の講習会をする筆者です。

 裏千家茶道教室「無盡庵」主宰