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日本最大級のタイ古陶磁コレクション
日泰寺、展示へ取得
上床氏遺族から500点

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 タイは安南(ベトナム)とともに中国の影響下、独自の陶磁器を産出した東南アジアの数少ないやきもの国。タイ古陶磁の日本最大級の「上床(うわとこ)コレクション」500数十点が、「日本とタイの寺」として知られる覚王山日泰寺(名古屋市千種区法王町)に一括収蔵され、境内の遊休施設を改修し展示館を作る構想が進んでいます。

 実現すれば、先史時代からタイで花開いた独自の陶磁器を紹介、タイ文化の魅力を発信する拠点になりそうです。

 このコレクションは、愛知県南知多町豊浜の医師、故上床亨さん(1923~2006年)が、日本ではあまり知られていないタイ古陶磁の収集を1970年代後半から始め、その後の古窯発掘ブームを追い風にコレクションを築きました。

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 代表的な古窯、白地鉄絵の14世紀の宋胡録(すんころく)を中心に、先史時代の土器から十八世紀までの青磁、黒釉、染付などさまざまな産地、技法の古陶磁を網羅。魔よけの宋胡録「鉄絵三頭竜神像」など、珍しい神獣、人物像の逸品も含まれています。タイの先史時代の土器群コレクションは地味ながら、他の追随許さない、希少なものといわれ、専門家の調査がまたれます。

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 コレクションのうち計約200点は1997年、2002年、2度にわたって岐阜県陶磁資料館(現・多治見市美濃焼ミュージアム)の展示会に出品されました。上床さんは調査、研究にも情熱を注ぎ専門誌「陶説」に長く連載するなど、国内ではタイ古陶磁収集の第一人者として知られました。
没後も収集品は散逸することなく遺族によって保管され、遺族が古美術商を通じて譲渡先を探し、タイゆかりの日泰寺に一括譲渡を打診しました。
「日本文化とタイ文化の発信」を掲げる村上圓竜氏が寺トップの代表役員になってから、交渉は進捗、一年前に購入、寺内の保管庫に収蔵されました。

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 村上さんは「あまり使われていない境内の普門閣を改修して、タイ古陶磁の展示を中心にタイ文化を紹介する施設にしたい。学芸員については、資格を持つ僧職を養成する」と話しています。普門閣は本堂の隣にある鉄筋コンクリート2階建ての大型葬祭ホールですが、葬祭業者が自前の葬祭場を持つとともに、コロナ禍で家族葬が広がり、大規模葬儀は減少したため、遊休施設になっているそうです。公開時期は未定。

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 日泰寺では、名古屋を代表する茶人森川勘一郎の「田舎家茶室」を境内茶室エリアに移築する事業が進行中です。名古屋きっての格式をもつ寺の一つが文化事業に力を注ぎ、寺と門前の覚王山地区の活性化に本腰を入れる構えです。

タイ古陶磁とは 中国陶磁の影響を受けながら、おおらかな鉄絵が特徴のタイ古陶を代表する宋胡録、白釉、緑釉、青磁釉など多彩な古窯跡がタイ北部や国境地帯に多数散在。その全貌はまだ解明されていません。

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日泰寺とは 明治時代、釈迦の遺骨がシャム(現タイ)国王から贈られたのをきっかけに、安置する場所として1904(明治37)年に建立。プミポン国王(当時)夫妻は来日時に寺を訪ねた。本堂完成時には国王からタイ文字で「釈迦牟尼仏」と書かれた額が贈られ、本堂に掲げられている。